正直になれない大学生ブログ

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現代に通じる愛憎劇 読みやすい谷崎潤一郎

痴人の愛(青空文庫) 谷崎潤一郎(著)

 

 この本を読んだ衝撃はなんとも強いものでした。言い過ぎかもしれないけれど。

 純文学というものを初めて読んだからというのもあるのでしょうが(なにを純というかはいささか不明ですが)、心情の機微と目に浮かぶ光景がこんなにも伝わってくるのかと思いました。

 

 簡単に述べてしまえば、この本のあらすじは「20代後半の男サラリーマンが、10代の少女を理想の妻に育てようとしていると、いつまにかこの少女に溺れている。」と言ったところでしょうか。コンセプトは、惚れたら負け、ってことなのかな。こんなに簡単な言葉でまとめていいのか不安になります。

 

受け取り手による感じ方の違い

 読んでいて、これは男性と女性によって感じ取り方が変わるだろうなと想像しました。

 まず、男性の場合、これはほぼ主人公と同じ心境だろうと思います。飯は欲しい、服を買え、という我儘を聞き、あれこれ尽くしやってるのに、文句は言うし、たくさん浮気はするし、やってられない! と、ここまでは同じように同調する人も多いと思います。
 しかし、物語後半の主人公に対する気持ちは、イラつきと諦めに変わるでしょう。
 
 物語の中盤で、ダンス会場に足を運び踊るシーンがあるのですが、その帰り道に主人公は
 
あの頃のナオミに惚れたので、それの惰勢が今日まで続いて来たのだけれど、考えて見れば知らない間に、この女は随分たまらないイヤな奴になっているのだ。
 
という感情を抱きます。そこで、よし! このままナオミを諦めてしまえと思うですが、家に帰ってみると、
 
再びナオミのあらゆる部分が、眼でも鼻でも手でも足でも、蠱惑に充ちて来るようになり、そしてそれらの一つ一つが、私に取って味わい尽せぬ無上の物になるのでした。
 
 すぐに「イヤな奴」という感情をすっぱり忘れてしまうのです。
 その後何度もこの感情を繰り返し、浜田の忠告も届かず、その度に私はイライラさせられました。しかし、私は、そのうち主人公に対して諦めの気持ちを抱き始め、とうとう憐れみに変わりました。
 
 
 一方、女性の場合は、自由を束縛する男に飽き飽きすると感じるでしょうか。
 あれこれものを与え、教室に通わせるためにお金は使ってくれるが、毎日単調な生活しか送らせてくれないという退屈さ。やたら他人(といっても夫ではあるが)の交友関係を気にしてくるなどの束縛。また、これからの人生ずっとこのままかという苛立ちというか虚無感、一種の絶望感を想像すると、どうにもやっていらないと考えるかもしれない。
 
 最後に、読書メーターに良いなと思える考え方をを見つけたので、引用して終わりにしようと思います。
最後の最後に「ジョージ」と西洋人風の名前が強調されるのだけれど、ナオミのほうもまた彼の名前のみを、しかも西洋「風」という上辺だけを気に入って15歳の頃に取り入ったのかもしれないと考えると悲しくなってくる。(かみしの  2017/12/17)
 
 どう過ごしていっても結局、この結末を避けること難しかったのではないかなと思ってしまいます。
 その生活に満足しているなら、それでもいいですが。
 
印象に残った言葉
「愛する女に自信を持たせるのはいいが、その結果として今度は此方が自信を失うようになる。もうそうなっては容易に女の優越感に打ち勝つことは出来なくなります。そして思わぬ禍がそこから生じるようになります。」
 
 
今週読んだ本