正直になれない大学生ブログ

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「盛る」ということ

名画で読み解く イギリス王家12の物語 (光文社新書) 中野 京子 (著)

 

 残虐性と血筋への執着。イギリスの王朝時代は現代的に見れば理解し難い壮絶な物語である。

 

 ただ一点可笑しいなと感じたことがある。それは周りによく見せたいという思いが「盛る」ことで絵画に現れていることだ。1つは「お見合い写真」として使用されていた時。テューダー家のヘンリー八世はドイツの公女の絵と実物が違うと「重臣に八つ当たり」し、メアリ一世の絵も実物とは違い「魔女のように痩せ、歯槽膿漏で歯もだいぶ欠けていたらし」い。2つは王侯の権威付けに使われる時。エリザベス一世は「プロパガンダの一環」として「本人に似ても似つかぬ」容貌で描かれていたし、ハノーヴァー家のジョージ四世は「ダンディを気取る」が、実は「濃い頬紅を塗」り「巨大な肉塊を持て余し、チョッキは辛うじて1つだけ嵌っている」。婚姻にしろプロバガンダにしろ、はたまた権威を示すためにしろ肖像画は自分を「盛る」ために使われていることが多い。

 しかし、この「盛る」ことを他人事とは思えない。現在の日本では自分の顔を美化するようなプリクラが発達し、スマホの普及によってsnowやfoodieなどの写真画像編集アプリが流行り始めている。女性なら目を大きく見せ肌は本来の色から純白へ、男性はニキビを隠しスリムに見せる編集が施される。そして例えばその写真をSNSで自分をアピールし、お見合いアプリや出会い系などで自分を魅力をアピールする。現代では理解できないような斬首や幽閉などが日常的に行われてきたイギリス王室に理解は示すことが難しくともこのような「盛る」ことは現代人感覚から共感できるポイントなのではないか。

 

 領土拡大を狙うための政略結婚や宗教対立をもとにして起こる戦争や内戦など政治に関わる際に王朝をどれだけ安定させるかが重要であり、それを肖像画によって王侯のイメージを形作る。「盛る」ことをしなければ結婚も難しくなるし、国民が圧倒されるような人物かどうかで政治のしやすさも変わってくる。そのような外ズラをよく見せる、有利にことを進めたいという感覚は現代の我々にも共通する。王が気に入らないからと民を死刑にする絶対君主から議会を通さないと国家予算も斬首も婚姻も認めないという立憲君主へと、ふらふらしながらテューダー家、ステュアート家、ハノーヴァー家と王朝が変わっていく様が名画と絡めながら語られていく。歴史的出来事には眉をひそめたくなる部分が多く共感しにくいかもしれないが、特に肖像画が歴史的にどんな役割を持っているのかを知ることで絵画を見る楽しみが1つ増える。

 

名画で読み解く イギリス王家12の物語 (光文社新書)

名画で読み解く イギリス王家12の物語 (光文社新書)

 

 

今週読んだ本
  • 不可能性の時代 (岩波新書) 大澤 真幸 (著) – 2008/4/22
  • 中学生からの大学講義 5 生き抜く力を身につける (ちくまプリマー新書)  桐光学園 (編集), ちくまプリマー新書編集部 (編集) – 2015/5/7
  • 名画で読み解く イギリス王家12の物語 (光文社新書) 中野 京子 (著) – 2017/10/17